IT業界から足を洗う前のチェックリストと20代〜50代別の注意点を解説

この記事は、過酷な環境に疲弊し「IT業界を去りたい」と考えるエンジニアに対し、冷静なキャリア選択を提示する極めて価値の高い内容です。特に、現状の不満を「業界」か「職種」どちらに起因するかで整理し、スキルを捨てずに環境を変える現実的な解法が示されており、感情的になりがちな転職初期段階で読むべき指針と言えるでしょう。
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もう限界……IT業界から足を洗いたい



そういう気持ちになるときって、ありますよね。
直しても直しても次々発見されるバグ、顧客からの厳しい納期、なのに毎年上がる給与はほんの少し……いっそのことIT業界から足を洗いたいという人に何人も会ってきました。
人生は一度きり。IT業界を辞めるのも選択肢のひとつです。
でも、IT業界を辞める場合、どんな選択肢があって、それにはどんなメリットとデメリットがあるのか、辞める前に一緒に考えてみませんか?
- IT業界から足を洗う前に知っておくべきこと
- 異職種・異業種への転職の選択肢
- 選択肢ごとのメリットとデメリット
なお、本記事で「IT業界」とは、システムインテグレーター(SIer)やSESで働くシステムエンジニアに加えて、SaaSを開発・提供する自社開発企業に所属するITエンジニア、ITコンサルタントを含みます。
- 情報システム部門のマネージャ職
- 社内SE採用担当歴8年(書類選考、面接)
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「辞めたい」は甘えではない



まず第一に「辞めたい」は甘えではありませんし、恥ずかしいことでもありません。自分を責めずに冷静に考えてみましょう
IT業界にはいくつもツライことがあります。あなたと同じようにツライ・辞めたいと考える人に多いパターンを見てみましょう。自分だけじゃないとわかるだけでも少し安心感があります。
多重請負構造による低賃金
IT業界、特にSIerとSES企業においては、どうやっても変えようのない「多重請負構造」の問題があります。元請け(1次請け)から2次・3次と仕事が流れるたびにマージン(利益・販管費)が引かれます。
例えば、顧客の予算上1人月100万円だとすると、1社通すごとに20万円ずつ引かれて、あなたが3次請け企業に属していると手元に届くときには40万円になっているということもあります。
現場の開発や運用、アーキテクチャを支えているのは自分なのに、なぜ元請けが儲かる仕組みになっているのかとやり場のない怒りを覚えるのはあなただけではありません。


やりがい搾取
未経験からITエンジニアを目指している方なら、自分のやりがいが低賃金で搾取されているように感じることもあるかもしれません。
「未経験だからなんでもやって経験値を積もう」と心に決めていたとしても、評価されるのは一次請け企業や二次請けのリーダークラスばかりでは、やりがいを搾取されていると感じても不思議ではありません。
慢性的な残業・休日出勤
「本番リリース前は終電があたりまえ」「本番障害が出たら深夜対応」「休日のリリース作業」……ITエンジニアなら忙しいときもあります。でも問題はそれが常態化していることです。
慢性的な人手不足と無理な納期、そんな環境に慣れてしまい、断ることすら考えなくなってしまう。ふとしたときや体調を崩しかけたときに「これがやりたかった仕事だったっけ?」と我に返って虚しいと感じるのはあなただけではありません。
異業種転職と異職種転職の違い



「IT業界から足を洗うんだ!!」といきなり辞めてしまう前に、すこし冷静になって転職先について考えてみましょう
転職活動をはじめる前に、選択肢を大きく2軸で整理しておきましょう。
| IT業界(同業種) | 非IT業界(異業種) | |
|---|---|---|
| ITエンジニア職(同職種) | 同職種 ✕ 同業種 例)ホワイトSIer | 同職種 ✕ 異業種 例)社内SE |
| 非ITエンジニア職(異職種) | 異職種 ✕ 同業種 例)IT営業・ITヘルプデスク | 異職種 ✕ 異業種 例)営業・公務員 |
それぞれにメリット・デメリット(リスク)があります。この軸に沿って見ていきましょう。
パターン1:ITから完全に足を洗う
PCすら見たくない!
そんな、「IT業界からも、ITという仕事からもとにかく離れたい」という方は、自然と「異職種 ✕ 異業種」への転職が選択肢になります。
| IT業界(同業界) | 非IT業界(異業種) | |
|---|---|---|
| ITエンジニア職(同職種) | 同職種 ✕ 同業種 例)ホワイトSIer | 同職種 ✕ 異業種 例)社内SE |
| 非ITエンジニア職(異職種) | 異職種 ✕ 同業種 例)IT営業・ITヘルプデスク | 異職種 ✕ 異業種 例)営業・公務員 |
メリット:とにかくITから距離を置ける
「異職種 ✕ 異業種」なら、完全にITから距離を取ることができます。例えば、営業や公務員に転職するイメージです。
コーディングや設計だけでなく、WBSを見ることもなくなり、新しい技術のキャッチアップが不要な毎日が手に入れられるのが最大のメリットです。精神的なリセット効果は最大でしょう。
異職種 ✕ 異業種へ転職する前のチェックリスト
ただし、仕事も業界も変える場合、つぎのリスクがあることを冷静に考える必要があります。
- 一時的に年収がダウンする可能性がある
- これまでのスキルがリセットされる
- 新しい職種はイチから勉強が必要になる
- 新しい業界は自分にあわない可能性がある
仕事も業界も変えるとなると、これらのリスクは避けることができません。



わたしもIT業界から教育業界へ転職した経験があります。IT業界の「実は良い面」に気づいたのは転職した後でした
- 業界自体は好調で、今後も成長が見込める
- 人間関係の距離感はドライ気味で気楽
- 上限関係が比較的フラット
- プロジェクト単位で人間関係がリセットされる
- フリーランスという選択肢が残しやすい
けっして教育業界が悪いと言いたいわけではありません。でもIT業界ほど将来性が高い業界は他を探してもありません。さらに、人間関係が気楽でリセットしやすく、スキル次第で50代になってもフリーランスの道が残っている業界は貴重だと言えます。
パターン2:異業種でITの仕事をする
スキルがリセットされるのはもったいない。でももうシステム開発で遅くまで残るのはツライ
そんな場合は、IT業界からは離れつつ、スキルを活かせる転職先を探すことになります。「足を洗う」ばかり考えて、自分が「何を変えたいのか」を明確にしてみましょう。
| IT業界(同業界) | 非IT業界(異業種) | |
|---|---|---|
| ITエンジニア職(同職種) | 同職種 ✕ 同業種 例)ホワイトSIer | 同職種 ✕ 異業種 例)社内SE |
| 非ITエンジニア職(異職種) | 異職種 ✕ 同業種 例)IT営業・ITヘルプデスク | 異職種 ✕ 異業種 例)営業・公務員 |
メリット:これまでのスキル/経験を活かせる
最大のメリットは、これまでのキャリアを活かせることで、年収ダウンを最低限に抑えつつ、環境を大きく変えられる点です。
例えば、非IT業界の社内SEに転職すれば、年収ダウンどころか、年収がアップする場合もあります。
エンジニアリングの知識やプロジェクト管理の経験は、IT以外の業界でも高く評価されます。特にDX推進の文脈でITリテラシーの高い人材を求めている事業会社の求人はたくさんあります。
異業種へ転職する前のチェックリスト



わたし自身も社内SEです。転職前にいくつか覚悟が必要ですよ
社内SEへ転職するなら、事前にいくつか覚悟しておく方がよいことがあります。
- 情報システム部門や社内SEの役割は会社によって異なる
- 間接部門なので高く評価しない会社もある
- 業界によっては年収ダウンする可能性がある
- 情シスの求人はSIerやSESほど多くない
まず、社内SEの役割は会社によって大きく異なります。要件定義と受入テストだけやる場合もあれば、コーディングまでやる場合もあります。会社の情シスのタイプを見定めておかないとあなたが「足を洗いたい」という理由が解消されない可能性があります。


また、年収は個人のスキルではなく、転職先の業界の給与水準から大きく影響を受けるということを知ったうえで転職活動をするようにしましょう。情報・通信業(=IT業界)は全業種のなかで比較的給与水準が高い業界と言われています。もしあなたが給与水準の低い業界で社内SEの仕事を探すなら給与は諦めるほかありません。


パターン3:同業界でホワイト環境を探す
よくよく考えてみたら、IT業界がイヤなんじゃなく、うちの会社がイヤだってことがわかりました
会社がイヤなんじゃなく、とにかく今の上司やプロジェクトがイヤだとわかった
現状の不満が爆発して「IT業界から足を洗いたい!」と考えていても、実は会社・上司・プロジェクトがイヤだっただけというのはよくある話です。
同じ業界・同じ会社のなかでより良い環境を求める転職活動、あるいは会社は変えず、いわゆる”社内転職”をするという選択肢になります。
| IT業界(同業界) | 非IT業界(異業種) | |
|---|---|---|
| ITエンジニア職(同職種) | 同職種 ✕ 同業種 例)ホワイトSIer | 同職種 ✕ 異業種 例)社内SE |
| 非ITエンジニア職(異職種) | 異職種 ✕ 同業種 例)IT営業・ITヘルプデスク | 異職種 ✕ 異業種 例)営業・公務員 |
メリット:完全な上位互換
例えば、業界内でホワイトなSIerに転職する場合、あなたのスキル/経験はほぼそのまま活かせるため、会社が変わる以外のリスクはほぼありません。
転職が成功すれば、ほぼ上位互換だと考えてもよいでしょう。もちろん、転職先の部署や上司のアタリ/ハズレはありますが、それは会社に残っていても将来の人事異動でどうなるかわかりません。つまり運次第です。
IT業界でホワイトな労働環境を実現したいなら、ホワイトなSIerを目指すべきでしょう。


同業種へ転職する前のチェックリスト
同業種への転職にも一定の確認は必要です。事前にチェックポイントを見ておきましょう。
- 給与水準はどうか?
- SESの比率は高くないか?(客先環境に左右されるリスク)
- 残業時間の平均は?
- 有給消化率・育児休暇取得率はどうか?
いずれも『Openwork』や厚生労働省の『しょくばラボ』で検索できるポイントです。転職先を探す際には必ずチェックしておくことをおすすめします。




年代別の注意点



特に異職種 ✕ 異業種へ転職する場合は、年齢や人生設計に応じた選択が必要です。
20代 ほぼリスクなし
言うまでもなく若さが最大の武器になります。「異職種 ✕ 異業種」への転職であっても企業側の許容度は高く、年齢を理由に落ちることはほぼありません。
ただし、ポテンシャル採用になるため、志望企業側があなたに可能性を感じる必要があります。例えば、学歴やTOEICのような仕事以外でもアピールできる実績を作っておく方がより有利に転職活動を進められます。
また、あなたが会社を選ぶ際には、教育制度が整っているかをチェックすることで、長期的な成長につながります。




30代 同職種転職が圧倒的に有利
転職市場において、30代は即戦力を求められます。つまり、ポテンシャルではなく「何ができるか」が問われる年代です。
ITエンジニアを辞めて異職種へ転職するなら、あなたは「何もできない人」と見られることになるため、これまでの経験値や実績を「汎化」して伝える必要があります。
汎化とは、例えばオフショア部隊をマネジメントして大規模システムを開発した経験があるなら、「多様性の高いメンバーであっても生産性を維持しながら、チームをリードして経営陣に案件状況を説明できる力がある」と他でも通用するスキルへ言い換えることです。
志望企業が求めるスキルと汎化したあなたのスキルをうまくマッチさせる必要があります。


40代 ITスキル+管理職経験でなんとかなる
40代になると、技術だけで高く評価される人はほんの一握りです。
ただ、同職種ならプロジェクトマネージャを求める企業はIT業界・非IT業界ともに多いため、他社でも通用するマネジメント経験を組み合わせることができれば、転職市場で苦戦することはそう多くありません。
一方、異職種への転職は相当の覚悟が必要です。現在のあなたの年収によりますが、ほぼ確実に年収はダウンすると考えてよいでしょう。


50代 ハイリスクだが、リファラルで突破口を
50代は転職サイトからの応募ではかなり厳しい戦いになります。書類選考を通過しても大幅な年収ダウンをともなうケースが多いでしょう。人生において50代はもっとも出費が多いと言われるため、年収ダウンには十分な注意が必要です。
同職種・同業種であれば最も現実的な手段は、これまでの人脈を使ったリファラル採用でしょう。
ただし、リファラル採用も注意が必要です。よく知る人物からの紹介だからといって、必ずしもあなたとマッチした職場とは限りません。安心せず、50代になっても「転職の軸」、つまり今回の転職で何を実現したいのかを明確にする必要があります。
納得して働くための転職ステップ


異職種・異業種への転職であっても、これまでのキャリアの棚卸しは十分に行いましょう。
そして、なぜIT業界から転職したいのか(=転職で実現したいこと)をしっかりと整理しておきましょう。
年齢が上がれば上がるほど、やりがいだけでなく、人生設計や出費の計画に照らし合わせた冷静な判断が必要になります。そのときに重要なのが、この「転職の軸」なんです。


異職種も異業種も、両方の可能性を探りたいなら転職エージェントの利用は必須です。
「転職市場において自分にどれだけの価値があるのかわからない……」という状態で一人で転職活動をすると、志望企業側に安く評価されてしまう可能性があるためです。
経験値がない業界や職種は、悩まずアドバイザーに相談する方がメリットが大きいでしょう。
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IT業界出身のアドバイザーが多数在籍しており、はじめての転職もしっかりサポートしてくれるため、安心して利用できます。








転職エージェントのアドバイザーと日程調整をして面談を行います。
対面・オンラインを選択できるケースがほとんどです。
アドバイザーには遠慮せず自分が転職で実現したいことを伝えましょう。
一方、アドバイザーからのアドバイスやコメントはなるべく前向きにとらえて転職活動に活かせる部分がないか探しましょう。
アドバイザーの言うことを一切聞かずに進めるくらいなら、自分ひとりで転職サイトで求人を探しながら進める方がマシだからです。
履歴書・職務経歴書は相手の関心事(=募集要項に記載された求めるスキルや人材像)に沿って、あなたがアピールできる点に絞りましょう。
そのためにも、以下の質問に答えるイメージで履歴書・職務経歴書を作成しましょう。もちろん、転職エージェントのアドバイザーに添削をお願いしましょう。
・なぜ、今の会社を辞めたいのか?
・転職したい理由は?
・なぜ、つぎはすぐに辞めないと言えるのか?
面接はしっかりと準備をしてから臨みましょう。転職活動がひさしぶりという方は、面接となると言葉が出てこないものです。
面接は相手と戦う場ではありません。仮に専門性を問われたら自分が知っていることを伝えつつ、今後しっかりとキャッチアップし、柔軟に対応できる点をアピールしましょう。
無事に内定が出たら、最後は待遇に関する面談です。転職エージェントが交渉してくれる場合があります。
異職種への転職の場合、年収について交渉の幅はあまり大きくありません。会社側も交渉のカード(=会社からの許可)を持っていないので、強気な交渉は採用見送りにつながりやすいと考えておく方がよいでしょう。
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