【社内SEスキル大全】即採用されるスキル習得のロードマップを解説!
社内SEに転職したい!
でも必要なスキルがわかりません…
社内SEに求められるスキルは幅広く、どの順で身につければいいのかわからないですよね。
情報システム部門は企業ごとでタイプが異なりますが、社内SEに求められるスキルは5つのスキル群に集約できます。そして、下記の順に身につけていくことでスムーズにスキル習得が可能です。
社内SEに求められる5つのスキル群
① 基礎スキル
② 対システムスキル
③ 対業務部門スキル
④ 対チームスキル
⑤ 対経営層スキル
この記事では、社内SEに求められるスキルと習得の流れについて解説します。わたしはこれまでSIerで10年以上、社内SEで5年以上キャリアを積んできましたので、厳選した「習得に有効なおすすめ書籍」もご紹介します。
- 情報システム部門のマネージャ職
- 社内SE採用担当歴7年(書類選考、面接)
- 大手SIer 10年以上の勤務経験
- 35歳をすぎて倍率200倍の社内SEへ
- 転職相談はX(Twitter)のDMでお気軽に!
社内SEの業務内容
社内SEに求められるスキルを知るためには、社内SEの業務内容を把握する必要があります。社内SEの業務範囲は幅広く、さらに企業ごとに情報システム部門の役割は異なります。
- システム戦略策定
- システム企画
- システム導入(システム開発含む)
- システム保守/運用
- PC等のIT資産管理
- ネットワークインフラ管理
- システム導入効果の評価
- 情報セキュリティ関連
- システムやPC、ネットワークのヘルプデスク
- デジタルトランスフォーメーション推進
- システム監査対応
これらをすべてカバーする必要はありません。情報システム部門の役割は企業によって大きく異なります。例えば、自社内でプログラム開発をしている場合と外部委託している場合では求められる「システム開発スキル」のレベルも自ずと異なります。
分類タイプの詳細が気になる方は『35歳以上が書類通過率アップしたいなら、『社内SEのタイプ』を分類しよう!』を参照してみてください。
また、社内SEに求められる資格が気になる方は『【転職で有利】社内SEに必要な資格20種類をランキング!おすすめの資格を難易度別に紹介!』をごらんください。
社内SEに求められる5つのスキル群
企業ごとに情報システム部門の役割は異なり、求められるスキルレベルの違いますが、求められるスキルの領域に同じです。
でも外部委託するなら知らなくてもいいんじゃない?
いいえ、それは間違いです。
スキルが低いと提案依頼も見積もり評価もできません。
最低でも「発注できるレベル」で知っておく必要があります
では、社内SEに求められる5つのスキル群を見ていきましょう。
求められるのは下図のとおり、①基礎スキル、②対システムスキル、③対業務部門スキル、④対チームスキル、⑤対経営層スキルです。それぞれがさらに3つのに分類されます。つぎのブロックから詳細に説明します。
① 基礎スキル
社内SEがまっさきに身につけるべきスキルは「基礎スキル」です。
基礎スキルとは、「対システムスキル」や「対業務部門スキル」などの専門性の高いスキルの前に身につけるべきスキルです。基礎スキルがなければ、専門性の高いスキルをいくら身につけても社内SEとして活躍することは難しいでしょう。それだけ重要なスキルと言えます。
基礎スキルは以下の3つで構成されます
基礎スキルの構成要素
「基礎スキル」を構成する要素
① コミュニケーションスキル
② セルフマネジメントスキル
③ 効率化スキル
コミュニケーションスキル
基礎スキルの1つにコミュニケーションがあります。
ここでいうコミュニケーションスキルとは、就活生に求められる「コミュ力」とは別物です。具体的には「ロジカルシンキング」「プレゼンテーション」「ファシリテーション」に分解できます。
複雑な物事を整理して、論理的に順序立てて考える。なかには明確な因果関係が判然とせず、仮設・検証を必要とするような複雑なものもある。
論理的に整理した物事を「聞き手にとって必要なレベルで」「正確に」「わかりやすく」「伝わったあとのアクションが明確になるように」伝える。
伝えたあと、議論が必要な場合は、議論を円滑に推進させるために周囲を巻き込み、状況が参加者に見えるようにして必要な意見を聴取し、まとめあげる。
コミュニケーションスキルが求められるシーン
社内SEは多くの関係者と仕事をする機会が多いポジションです。経営層、システムの利用者、発注先であるSIer、常駐しているSESのメンバーなど毎日のようにコミュニケーションを取ります。
全員が同じ方向を向いていればよいのですが、問題が起きると利害関係が一致しません。そういったメンバーと共通のゴールを目指すためにコミュニケーションスキルが必要になります。
コミュニケーションスキル習得におすすめの書籍
ロジカルシンキングの名著と言えるのが『ロジカル・プレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」』です。
社内SEにかぎらず、すべてのビジネスパーソンが読むべきと言える内容です。論理的に整理して、それをどのように相手に伝えるのかを基礎から学び直したい人には最適です。
ちなみに、これができていない応募書類は容赦なく選考から落ちていきます。
コミュニケーション力の中にはプレゼンテーション力があります。わかりやすい資料、見た人が納得してつぎのアクションを理解できる資料の作り方について解説されたのが『プロの資料作成力』です。目的の明確化、ターゲットの仮設、構成の考え方、メッセージの作り方まで完結に解説されています。
表やグラフ、チャートの加工方法まで、具体的な例を示しながら丁寧に解説されており、1つレベルの上がった資料作りにつながります。
コミュニケーション力の中にはファシリテーション力があります。ファシリテーションとは「ミーティングを円滑に進める技法」のことです。ではどうすればミーティングは円滑に進むのでしょうか。議論の内容をリアルタイムに可視化することも1つの方法です。
グラフィックレコーディングは「対話や議論をリアルタイムでグラフィックによって可視化することで相互理解を深めて議論を円滑にする」ことです。具体的には「一覧化」と「構造化」で、一枚の紙に整理する方法、その練習方法まで解説されているのが『Graphic Recorder 議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』です。
豊富な例と5W1Hの図解方法が解説されており、リアルタイムに図解するのが苦手な方にも、自分では絵が下手だと思っている方にもおすすめできます。
ファシリテーション力を鍛えると、社内でシステム導入する際の議論をスムーズに進めることができます。利害関係にある複数の部署を調整したり、メリットとデメリットを天秤にかけるファシリテーションのシーンは社内SEなら日常茶飯事です。
『問題解決ファシリテーター』はコンサルタントや上流を担当するITエンジニアにも多くの読者がいる、ファシリテーションを体系立てて学べる1冊です。具体的な事例に沿って「この場合、どう考えてどう行動すべきか」を学べる良書です。
セルフマネジメントスキル
「セルフマネジメント」とは、自分で自分自身をマネジメントすることで、一定の品質の仕事を期日までにアウトプットすること、またそのための計画を立てることです。しかもそれを複数の仕事をしながら達成できるスキルが必要です。つまり、「目標設定/目標遂行力」と「マルチタスク力」と言えます。
なんでそんな当たり前のことが必要なの?
社内SEにセルフマネジメントが必要な理由は2つ
① 自分で目標設定しないとずるずる行ってしまうポジションだから
② 仕事が多岐にわたり同時並行で進むのでマルチタスク管理しないと仕事が抜け落ちるから
セルフマネジメントスキルが求められるシーン
多くの企業では情報システム部門に十分な人員がいませんので、35歳以上で転職した方なら、複数の仕事を任されることになります。仕事を任されると、「自分で計画を立てる」「マルチタスクで複数案件の進捗管理をする」というセルフマネジメントが求められます。
セルフマネジメントスキル習得におすすめの書籍
まずは、自分の目標を「設定」「計画」「実行」するフェーズに分けて、目標達成のスキルが丁寧に解説されています。「気合と根性」「できるまでやり抜く」のような精神論ではないところもITエンジニア向けの目標達成に関する良書と言えます。
複数の仕事を同時並行で処理するマルチタスクは社内SEに必須のスキルですが、リソースが分散して仕事を抱えこむ人におすすめなのが元LINE CEOの森川 亮氏の『すべての仕事は10分で終わる マルチタスクでも仕事がたまらない究極の方法』です。
スピード感を持ってアウトプット量を増やすために仕事を10分で区切って処理することを薦める本書では、ToDoの管理方法やスケジューリングの考え方、仕事をためないためのルール、「プレゼン資料は型化しろ」「会議は事前に結論を3つ用意しておけ」といった細かなテクニックまで紹介されています。
- 会議は10分、目的は1つにする
- 全員賛成を目指さない
- 資料のロジックを補完するデータは3つあれば十分
- バッファを挟んだスケジューリングをせず詰めて早く終わらせた分をバッファにする
- タスクがこぼれたら1週間でせき止める
- リーダーの役割は「計画立案」「アサイン」「リマインド」
効率化スキル
「効率化スキル」とは重要な仕事を見定めて、そこに自分のリソースを集中的に投下できるようになることです。同時に、それ以外の仕事はなるべく時間をかけないように、じゃんじゃん自動化できる仕組みを自ら構築できるスキルです。
効率化スキルが求められるシーン
社内SEは小さな案件も含めると10や20のタスクを同時並行で進めることは日常茶飯事です。だからこそ、本当に重要な仕事に集中するための「考え方」が必要になります。
システムと名がつけば、なんでも社内SEの仕事になりがちな会社においては、タスクは増える一方です。
複数の業務を同時並行で担当するためには、自分の仕事を自動化・効率化するスキルが求められます。例えば、月次で行う作業を自動化したり、都度発生する定形作業の発生条件を自動検知したり、という具合です。
効率化スキル習得におすすめの書籍
自動化はVBAか、GASか、Slackアプリか、自社に合ったツールを使うべきです。一方、逆の発想で「成果を出すためには本当に重要な仕事に集中するために無駄な仕事はしない」という考え方も必要になります。
『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』はなんでも引き受けてしまう人にぜひ一読いただきたい良書です。Youtubeなどでも解説動画が複数ありますので、興味がある方はAmazonレビューを含めごらんください。
② 対システムスキル
基礎スキルのつぎに身につけたいのは「対システムスキル」です。
対システムスキルとは、一言で表すと「システムに詳しいこと」ですが、システムを「使う」ことに詳しいだけでなく、システムの「開発や導入、運用、セキュリティに詳しい」ことを指します。
対システムスキルの構成要素
「対システムスキル」を構成する要素
① プロジェクトマネジメントスキル
② システム開発スキル
③ システム運用スキル
プロジェクトマネジメントスキル
社内SEには、システム導入やシステム入れ替えのプロジェクト管理スキルが求められます。特に35歳以上になると、あなたが1人で複数のプロジェクトを担当することも珍しくないでしょう。
プロジェクト管理にはPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)やスクラム開発などの知識と実践経験が必要です。この習得に効率的なのはPMPやIPAのプロジェクトマネージャ(PM)試験に合格することです。バランスよく体系的に知識を習得でき、転職においても有利になります。
プロジェクトマネジメントスキルが求められるシーン
通常ほとんどの社内システムは6〜10年に一度リプレイス(入れ替え)が行われます。リプレイスは大規模なプロジェクトになるため、その計画から契約、進捗管理、課題管理などでプロジェクトマネジメントスキルが求められます。
プロジェクトマネジメントスキル習得におすすめの書籍
社内SEにもっとも求められるスキルの1つがプロジェクトマネジメントスキルと言えます。その教科書にあたるのが『PMBOKガイド プロジェクトマネジメント知識体系』です。PMBOKはプロジェクトマネジメントの国際標準ともいえる知識体系で、PMPはPMBOKから出題されますので、PMBOKをベースに実務経験を積むことで将来のPMP取得にもつながります。
PMBOKは700ページを超えるいわゆる「教科書」です。仕事でプロジェクトマネジメントを任されてから大急ぎで読むには不向きと言えます。「参考書」のようにさらっと読みたい場合のおすすめは『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』です。
本書は200ページ程度に適度にまとめられており、具体的なTipsが書かれています。また、プロジェクトの開始前と序盤に注力したマネジメントを推奨している点も社内SE向きと言え、非常におすすめです。
どれだけ注意もトラブルプロジェクトになってしまうことがあります。これは経験の長いITエンジニアなら誰でも経験があると思います。トラブルプロジェクトに特化した内容でもっとも幅広くトラブルを取り扱っている書籍の1つが『トラブル・プロジェクトの予防と是正』です。具体的には、以下を原因とするトラブルとその予防策・是正策が示されています。
- コミュニケーション不全
- ステークホルダー関与不足
- チームワーク不全
- 外部依存マネジメント不良
- 意思決定遅延
- プロジェクト方針変更
- プロジェクトの目的不明確
- スケジュール不適合
- WBS欠陥
- ソリューション選定誤り
- 委託先選定誤り
- テクノロジー選定誤り
- 開発手法選定誤り
- 見積り誤り
- 工程定義不適合
- 非機能要件軽視
- 不適切契約
- 要件定義不良(この中でさらに、精度不足、現行機能保証欠落、移行検討不足等)
- 設計不良
- テスト工程不良
- 工程完了基準不良
- 定量的品質評価不良
- ガバナンス欠陥
- スコープマネジメント不良
- 課題管理不全
- リスク管理不全
- 変更管理不全
- スキル要因不足
- 教育軽視
- コンフリクト過剰
- ストレス過剰
- 離脱影響
プロジェクトをマネジメントする社内SEの仕事のうち、忘れられがちですが非常に重要なのが「契約業務」です。トラブルが発生したときや委託先との認識齟齬が発生したときに拠りどころとなるのが「契約書」だからです。
しかし、多くのIT契約に関する書籍は受注者(=IT事業者)側向けのもので、発注者側に立った書籍は非常に少ない状況です。その中で、IT企業出身の弁護士である上山 浩氏の『弁護士が教える IT契約の教科書』は発注者側の視点で契約時の落とし穴や注意点について書かれた書籍です。
システム開発スキル
情報システム部門のタイプによっては、自前で設計やプログラム開発、テストを実施することもあります。特に、全行程自前型では、SIerよりもさらに技術的なスキルが求められます。
また、それ以外のタイプであってもシステム開発スキルは必要です。なぜなら、これらのタイプはシステム開発を外部へ委託し、その成果物をレビューしたり、計画を立てたりするためです。システム開発のスキルがなければレビューも計画策定もできません。
自前開発でも、外部委託でも、それぞれに応じたレベルのシステム開発スキルが求められます。
システム開発スキルが求められるシーン
リプレイスにおいて、自前で開発する場合、システム設計やプログラミング、テストの工程でシステム開発スキルが求められます。外部委託する場合でも、見積書レビューやシステム設計やテスト計画のレビュー、品質評価においてシステム開発スキルが求められます。
システム開発スキル習得におすすめの書籍
システムを自前でスクラッチ開発するタイプの情報システム部門であれば、システム開発工程の基礎的な知識が求められます。資格で言えば、基本情報技術者(できれば応用情報技術者)レベルの基礎知識が必要です。
基本情報技術者を取得していない方はさくっと取得してしまう方が良いでしょう。転職のときにもスキルの証明になります。ベース知識があれば50時間くらいで合格できますし、イチから勉強しても100〜200時間くらいの対策で合格できることが多いのでおすすめです。対策方法については『はじめての基本情報技術者(FE)試験の2ヶ月勉強法を徹底解説!』にまとめています。
さくっと勉強したい場合は以下がおすすめです
システム運用スキル
ほぼすべての情報システム部門では社内システムの運用/保守を行っています。そのスキルの習得には、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)を学ぶことが抜け漏れがなく効率的です。
ITIL(アイティルと呼びます)は、ITサービス管理のベストプラクティス(成功事例)をまとめたもので、ITサービスの企画・構築・運用に沿って5つのカテゴリー(サービス戦略、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、サービス改善)に分類されています。ITILからは技術ではなくマネジメントを学べます。
併せて、システム運用/保守には情報セキュリティに関する知識も求められます。この分野は日々進歩しているため、スキル面を追いかけるよりも、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)と呼ばれる情報セキュリティ対応チームの構築/運用スキルを磨く方が良いでしょう。自前で情報セキュリティの最前線エンジニアを雇うより、外部委託でスキルを調達しながら情報セキュリティ対応チームを運営できる人材を求めるケースが多いためです。
システム運用スキルが求められるシーン
世間では、DXを推進する人材が注目されていますが、実は企業の情報システムに関する投資の70%は現行システムの運用/保守に充てられていると言われています。これはシステム運用/保守のスキルが求められるシーンが最も多いと言い換えることができます。
③ 対業務部門スキル
「対システムスキル」を学びながら並行して身につけたいのが「対業務部門スキル」です。「対システムスキル」が『How(=どのように実現するか)』のスキルであるのに対して、「対業務部門スキル」は『What(=なにを実現すべきか)』だと言えます。
対業務部門スキルの構成要素
「対業務部門スキル」を構成する要素
① 業務知識
② 要件定義力
③ 課題解決力
業務知識
あなたが社内SEになって、業務部門との信頼関係を築きたいなら業務知識は避けては通れません。業務知識とは、例えば人事、給与、会計、生産管理、購買管理といったシステムの導入/運用を行う領域の業務に関する知識です。
業務知識が求められるシーン
業務部門の人たちはシステムのことはよくわからないという場合がほとんどです。それでもシステムを入れ替えたり、導入したりする必要に迫られたときに、業務部門の知識があり、専門用語が通じるITエンジニアがいたら一気に信頼されます。
業務知識習得におすすめの書籍
すべての領域の業務知識を持っている必要はありません。担当するシステム、担当するプロジェクトごとに働きながら急ピッチで学びます。わたしの例だと、人事・給与システムの入れ替えを担当するときに10冊ほど人事制度や給与支給、控除、労務管理、人事評価などの本をいっきに10冊程度買って流し読みをしました。
どの業務を担当するかわからないじゃん
1冊で薄く広く学ぶなら、つぎの1冊がおすすめです
要件定義力
要件定義とは、システムを開発/導入する前にユーザーの要求をまとめ、整理し、システムが提供する機能や非機能を文書化することを指します。
要件定義力が求められるシーン
転職する先の情報システム部門のタイプによりますが、多くのケースでシステム導入の要件定義を社内SEが行う、あるいはベンダーとともに行います。
要件定義力習得におすすめの書籍
要件定義に関する書籍は多数出版されているため、大きめの書店で自分にマッチする数冊を選ぶのがよいでしょう。
わたしが要件定義を学んだのはもう10年以上前ですが、あの頃に戻ってイチから学ぶなら『はじめよう!要件定義〜ビギナーからベテランまで』を選びます。実際に複数の要件定義本を並べて検討しました。
なぜなら、「要件とは」「要件定義の流れ」という基本的な内容に始まり、「大枠から定義していく」という要件定義でもっとも重要なポイントを重視した解説になっているからです。
要件定義の中で発生する「社内調整」が苦手という社内SEは多いと思います。わたし自身も得意とは言えません。そんな社内調整を物語風の読み物で教えてくれるのが『上流工程でステークホルダーの要求がまとまる技術』です。
意見の相違を明確化して、整理・共有するためのテクニックや社内SEがとるべき立ち位置について丁寧に解説してくれます。
課題解決力
システム導入や入れ替えで業務部門と協議していると、必ず「課題」が発生します。課題なしで終わるシステム導入など見たことがありません。
課題解決力が求められるシーン
例えば、システムの入れ替えに伴い業務フローを見直していると想定します。プロジェクトの新業務フロー案は会社全体の効率化につながるものの、経理部門の仕事が増えてしまい、経理から猛反対を受けるというようなケースがあります。
このようなケースでどのように物事を整理し、関係者に伝え、課題を解決へと導くのか、それが社内SEに求められるスキルの1つと言えます。
課題解決力習得におすすめの書籍
『コンサル一年目が学ぶこと』はコンサルタントの初学者向けに書かれた書籍なので、仮説検証、PREP法で結論先出し、エビデンスで説得、雲雨傘(事実と解釈とアクションを分ける)といった聞き慣れた方もいらっしゃるかもしれません。
でも正直に言うと、社内SEを10年近く経験したわたしも読み返すことがあるくらい本質的で、基本に立ち返るときに読みたい、大変おすすめの書籍です。
上記をパラパラと読んでみて、「もう少し上位レベルの経営課題を扱った本が読みたい」と感じる方には『問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』がおすすめです。
問題解決のプロセスはレベルが違っても同じです。問題の特定、原因の追求、あるべき姿の設定、対策の立案、実行、評価です。本書は体系立てて解説されており、取り扱う課題例の視座が高いところが特徴と言えます。
④対チームスキル
基礎スキルに続いて、対システムスキル・対業務部門スキルが身につくころには、社内SEとしてチームを率いてより大きな成果が求められるようになります。つまり、社内SEでありながら管理職としてのスキルを求められると言い換えることができます。
対チームスキルの構成要素
「対チームスキル」を構成する要素
① チームビルディングスキル
② 人材育成・人材採用スキル
③ 組織マネジメント
チームビルディングスキル
社内SEとしてチームを任されると、まっさきにチームビルディングが必要になります。チームメンバーがスキルを発揮し、目標を達成できるチーム運営です。
そんなのかんたんじゃないの?
みんな働いている目的や価値観が違うので、トラブルが起きたときは特に難しいんです。
チームビルディングスキルが求められるシーン
あなたがチームを任されたとき、すでにチームの形はできあがっていて前任者からあなたへリーダーが交代という形がもっとも多いケースでしょう。チーム内にはつぎのようなメンバーがいます。考えただけで胃が痛くなりませんか?
- お手並み拝見とばかりにあなたを見る年配のメンバー
- 怒りっぽくて周囲を萎縮させているメンバー
- 自分の意見を言わず何を考えているのかわからないメンバー
- リーダー候補としてあなたと競っていたメンバー
- 業務委託や派遣契約のメンバー
- フルリモートで一度も会ったことがないメンバー
それでも多数の課題にチームで取り組み、成果をあげる必要があるんです。どうでしょう?チームビルディングって必要ですよね?
チームビルディングスキル習得におすすめの書籍
はじめてチームを率いる人には『THE TEAM 5つの法則』がおすすめです。基本的な内容から具体的な手段まで紹介されていています。チームの目標設定やメンバーのモチベーションの維持方法、メンバーが働きやすい環境の維持など参考になるはずです。
関連文献までしっかりと示されているので、興味がある部分はさらに深堀りして読める点もおすすめです。中小企業ではなく、比較的大企業を想定している点は注意が必要です。
人材育成・人材採用スキル
チームが成果をあげるために必要なスキルが不足している場合、人材を育てたり、外部から調達してくるのもリーダーの重要な役割の1つです。
社内SEが所属する情報システム部門はSIerと比べると、人材教育が下手だと感じることがあります。コスト部門なのでどうしても教育コスト(教育のための研修費や人件費)が削減されやすい、教える人手が確保できない、という背景があるとわたしは考えています。
人材育成・人材採用スキルが求められるシーン
純粋に人の数が足りないケースもあれば、人数はいるが該当するスキルを持つ人が1人もいないというケースもあります。
特に、システムの導入や入れ替えにおけるシステム選定の結果、その領域のテクニカルスキルが新たにチームに求められたり、企業で大規模なセキュリティ事故が発生して急にセキュリティ人材が必要になるが内部にだれも該当する人材がいないというケースもあります。
人材育成・人材採用スキル習得におすすめの書籍
これは社内SEにかぎった話ではありませんが、SIerのITエンジニア以上に社内SEは「自分で考えて動く」人材が必要です。
SIerならWBSを引いて、メンバーはそれに従って設計・開発・テストを進めます。一方、社内SEはマルチタスクで優先順位も急に変わることが多いため、SIerほど計画的に作業ができない職場で、社内SEはWBSでガチガチに管理できないためです。だからこそ「自分で考えて動くメンバー」が必要になります。
『人を伸ばす力−内省と自律のすすめ』は少しカタくてアカデミックな書籍ですが、人が自分の内面の意欲によって積極的に行動を起こす「内発的動機づけ」について詳しく書かれています。
この「内発的動機づけ」を理解しているかどうかで、メンバーへの指示は大きく変わります。社内SEとして今後組織内で生きていくなら、「もっと早く読んでおけばよかった」と言わないためにも一度手にとって読んでみてください。
リーダーとして外部から人材を採用するなら、絶対に押さえておきたいのがIT人材の動向です。どのような人材が市場にいて、どれだけの年収ももらっていて、各社どのように人材評価をしているのか。
それを知らずに中途採用の人材募集をしても、よほどネームバリューがある企業以外は人が集まりません。集まるのは希望からはかけ離れた人材ばかりでしょう。
組織マネジメントスキル
チームリーダーが板についてくると、複数のチームを任されるようになります。そして、それは課だったり部だったりします。そういった組織をマネジメントするスキルも社内SEには必要になってきます。
では組織マネジメントは何をマネジメントするのでしょうか?それは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の経営資源です。これらを適切に計画し、管理し、足りなければ外から調達し、効果的に使うことで成果を最大化することこそが組織マネジメントのゴールです。
組織マネジメント習得におすすめの書籍
組織マネジメントが知りたければMBA関連の書籍を漁ればいくつも良書が出てきますが、人材のマネジメントについて、平易な言葉でわかりやすく解説されているのは以下を除いてないでしょう。
「サーバント・リーダーシップ」や「心理的安全性」といったキーワードは、MBA系の書籍だとずいぶんカタく語られていることが多いのですが、本書はそれがわかりやすく解説されていて非常に読み進めやすいのが特徴です。
⑤ 対経営層スキル
最後に身につけたいのは「対経営層スキル」です。
これまでのスキルはどれも情報システム部門内、あるいは業務部門や取引先とのやりとりに閉じた世界でした。一方で、社内SEとして順調にキャリアを進めると、自社の経営陣向けのスキルが必要となってきます。
対経営層スキルの構成要素
「対経営層スキル」を構成する要素
① IT戦略策定力
② システム企画・計画立案力
IT戦略策定力
近年ではIT戦略はDX戦略と呼ばれることもありますが、いずれにしてもITを使って業務を変革、ITを使って製品・サービスの価値を再定義するような取り組みが企業や組織に求められています。
IT戦略は経営の中期計画に組み込まれているケースもあれば、中期計画に沿って別途策定されるケースもあります。
IT戦略策定力が求められるシーン
個別のシステム計画ではなく、経営に直結するIT戦略を策定し、経営陣の承認を得るというミッションが与えられるのは、主に情報システム部長になるころでしょう。(実際には、部長から課長へ個別のミッションは落ちてきますが)
IT戦略策定力習得におすすめの書籍
DX戦略の策定や推進に悩んでいないIT部門の管理職など見たことがありません。そういった人向けに書店にはDXに関する書籍があふれかえっていますが、どれも「技術」や「業界」の延長線上で語られるものが多いのですが、『DX戦略立案書』は「経営」の延長線で書かれているため、他の書籍とは一線を画する1冊です。
MBAの教科書らしく、CC-DIVフレームワーク(顧客、競争、データ、革新、価値)に則って事例が解説されており、少しカタく感じる人もいるかもしれません。
情報システム部門の管理職になると、CIOをサポートする機会が増えます。(CIOをCOOが兼ねたり、そもそもCIOがいない場合ももちろんあります)
ではCIOはどの範囲に対して責任を持つべきなのか、これを語れる人はあまり多くないでしょう。つまり、CIOの仕事をしっかりと把握している人がいないのです。CIOをサポートするために『CIOハンドブック』は深くまで解説はされていませんが、広く取り扱われており、必読書と言えます。
システム企画・システム計画立案力
IT戦略が策定されたら、それに沿ってシステム企画・システム計画を立てます。ここでもビジネス感覚が求められます。自社のビジネス環境、競合の動向、システム投資対効果などです。
システム企画・システム計画立案力習得におすすめの書籍
システム企画やシステム計画を技術やプロジェクトマネジメントの側面から解説した書籍は多数ありますが、経営の側面から解説した書籍はわたしの知るかぎり多くありません。
その中でも『〜経営戦略の実効性を高める〜 情報システム計画の立て方・活かし方』はすでに絶版しているのですが、今でも人気の良書で、ITストラテジストの対策本として人気です。
戦略的システム化計画の作り方、情報システム構成の立案、経営者向け説明資料の作成方法まで解説されている他に類を見ない情報システム部長・課長向けの書籍と言えます。
社内SE転職事情に詳しい転職エージェントに相談して転職を決めればミスマッチを予防できます。また、カジュアル面談を通じてより良い案件を転職エージェントから聞き出しましょう。
転職エージェントができるアドバイス
1. 志望企業の情報システム部門が求める人材像
2. あなたのスキル/経験のうち、市場価値が高い部分がどこか
3. 社内SEの中途採用の面接対策