社内SE転職で『フルリモート』はおすすめしない5つの理由|採用担当者が解説
リモートワークいいですよね!通勤時間を家事や育児、自己研鑽に使えます。
実際に、エンジニアを採用する企業の9割以上がリモートワークを導入しており、なかには「フルリモートできることが転職の条件」と言うエンジニアもいます。
でもちょっと待ってください!
社内SEへの転職で採用の可能性を上げたいなら「フルリモート」や「リモートワークできますか?」のアピールは損するケースがあります
リモートワークを条件に含めると損する理由
① オンボーディングに時間と労力がかかる
② 社内SEに必要な「社内調整力」が身につきにくい
③ 社内SEが見つけるべき「現場の課題」が見えにくい
④ 「フルリモートしたい」は志望動機にならない
⑤ フルリモート・リモート前提の求人は少ない
この記事では、これらがなぜ損なのか解説するとともに、「どうしてもフルリモートで社内SEとして働きたい」という人にフルリモートしやすい求人の特徴を説明します。
- 情報システム部門のマネージャ職
- 社内SE採用担当歴6年(書類選考、面接)
- 大手SIer 10年以上の勤務経験
- 35歳をすぎて倍率200倍の社内SEへ
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日本国内のリモートワーク実施状況
2022年2月に実施されたレバテックキャリアの調査では、以下のとおりITエンジニアを採用する企業のほとんどがリモートワークを導入していることがわかっています。
エンジニアを採用する企業では、9割以上が「リモートワークを導入している」と回答し、全体の約4割がフルリモートで勤務していることがわかった。
引用:ITエンジニア採用企業の9割以上がリモートワークを導入 社会人エンジニアの4割がフルリモートで働く
同時期の別の調査ですが、東京都の調査によると、都内の企業全般では約63%がリモートワークを実施していることがわかっています。特徴として、企業規模に比例してリモートワークの実施率が高いことがわかっています。
これだけリモートワークが普及してるのに、なぜ社内SEへの転職でリモートワークを前提にすると採用率が下がってしまうの?
リモートワーク自体は悪いことではありません。
ただ、”採用の段階”でリモートワークできることを条件にすると損をする可能性があるんです。
理由① オンボーディングに時間と労力がかかる
オンボーディングとは「採用した人材が組織の一員として早期に成果を出せるレベルまでサポートすること」です。どれだけ能力が高い人材でもその組織になじむまでは成果を出しにくい状況が続きます。採用した企業側も早く成果を出してもらえるようにサポートします。
でもリモートワークは「コミュニケーションがうまくとれない」「マネジメントが難しい」「自分の成果をアピールしづらい」といった問題があると言われています。
これらの問題を解決するには「ツールの導入」「暗黙のルールをなくして見える化する」「コミュニケーション機会を設ける」などが必要と言われています。
そこまで対応して採用すべき人材か?と厳しい基準で評価されると合格率は低下してしまいます
理由② 社内SEに必要な「社内調整力」が身につきにくい
社内SEの仕事にはITエンジニアに必要な技術力に加えて、社内調整スキルが求められます。
この社内調整力はフルリモートより現地勤務の方が早期に身につけられると言えます。
なぜなら、社内の関係部署との信頼関係を築いたり、先輩社員の仕事の進め方を盗むといった点においてフルリモートより有利だからです。
中途採用面接で「フルリモート勤務を希望します」と言う人がいると、それを導入している企業であっても「この人はフルリモートで信頼関係を築けるだけの高いコミュニケーション力があるかな?」という高い基準で評価されることになります。
理由③ 社内SEが見つけるべき「現場の課題」が見えにくい
社内SEは会社によってその役割が異なりますが、「言われたことだけをやっていればOK」というケースはまれです。むしろシステム部門や業務部門の課題を見つけ出し、それを解決することが求められます。
フルリモートで働くと、表に見える課題はほんの一部であり、裏に隠れた課題を見つけ出すのは至難の業です。長年在籍した人材であってもフルリモートに切り替えた途端に隠れた課題が見えなくなるものです。転職で新しい環境に飛び込んだ人材がフルリモートで本来の課題を見つけ出すことの難しさは容易に想像できるはずです。
真の課題を把握できずにプロジェクトを進めた結果、成果をあげられず「あの中途採用は失敗だったな…」と言われてしまうのはもったいないと言わざるを得ません。
理由④ 「フルリモートしたい」は志望動機にならない
社内SEの中途採用面接で「現職はリモートワークできず、リモートで働きたい」とアピールされる方が一定数いらっしゃいます。
でもリモートワークは「転職条件」であって「転職理由」にはなりません。志望動機を伝えるべき面接の場で、「なぜここで働きたいか」「なにがやりたいか」ではなく、「どう働きたいか」を伝えても採用担当者にはまったく響かないのです。
さらに、リモートワークするために会社を替えたいと言う人材はどうしても定着率が悪いと判断されてしまいます。
労働条件が良い会社を見つけて、すぐにまた転職してしまうのでは?
と採用担当者に感じさせてしまったら負けです
理由⑤ フルリモート・リモート前提の求人は少ない
社内SEへの転職でリモートワークを条件にしない方がいい最後の理由は、シンプルにリモートワークを条件にすると求人数がぐっと減るからです。
例えば、マイナビITエージェントでは「社内SE」の求人数が2,737件(うち非公開555件)に対して、「社内SEかつリモートワーク/在宅勤務(制度あり)」の求人数は410件(うち非公開45件)にまで減ります。実に1/7まで減ってしまうんです。
同じく、Indeedで「社内SE」を検索すると、14,522件の求人がヒットしますが、「社内SE フルリモート」だと2,171件で、1/7程度まで減ります。
マイナビITエージェント | Indeed | |
---|---|---|
社内SE求人数(非公開含む) | 2,737件 | 14,522件 |
社内SEかつリモートワーク可の求人数 | 410件 | 2,171件 |
これは転職直後からリモートワークを前提とした求人が少ないというだけで、「社内SEはリモートできない」ということではありません。それだけ「転職直後は早期戦力化のために現地勤務してほしい」という採用企業側の思いがあると考えられます。
なにがなんでもフルリモートしたい人へのおすすめ
求人が少なくても、採用で不利でもいいからフルリモートの転職がしたいです。
なにがなんでもフルリモートで働ける会社に転職したいという場合は、以下の特徴を押さえて応募しましょう。
フルリモートでも転職しやすい社内SE求人の特徴
① 情シスの主な役割がヘルプデスク型のケース
② 情シスが全工程自前開発型のケース
③ 外資系企業やジョブ型雇用のケース
④ フルリモートを売りにした社内SE求人のケース
情報システム部門の役割は会社によって異なります。その中にはフルリモートに向いているタイプがあります。それが「ヘルプデスク型」と「全工程自前型」です。くわしくは『35歳以上が書類通過率アップしたいなら、『社内SEのタイプ』を分類しよう!』で解説していますが、これらのタイプであればフルリモートしやすい企業が見つかる可能性が高いと言えます。
他にも外資系企業のコーポレートIT人材、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)のあるジョブ型雇用であれば、成果が明確でフルリモートしやすいと言えるでしょう。
少ないとはいえ、社内SE求人全体の1/7程度はリモートを前提とした採用をしているため、これらの企業であればリモートワークしたいことを伝えてOK、つまりそれで合格率が低下することはないでしょう。
①〜④に共通しますが、大手企業ほどリモートワークの実施率が高いという調査結果がありますので、なるべく大手企業を狙うのもフルリモート実現のために有効な方法と言えます。
まとめ
社内SEという比較的安定した仕事に就くことを希望する人には、プライベートと充実させたいと考える人が多くフルリモートを希望される背景は理解できます。
一方で、この記事では以下の5つの理由で「社内SEへの転職でフルリモートを希望すると損をする」という理由を解説しました。
リモートワークを条件に含めると損する理由
① オンボーディングに時間と労力がかかる
② 社内SEに必要な「社内調整力」が身につきにくい
③ 社内SEが見つけるべき「現場の課題」が見えにくい
④ 「フルリモートしたい」は志望動機にならない
⑤ フルリモート・リモート前提の求人は少ない
わたし自身は、社内SEの中途採用をするうえで「フルリモートを前提とした転職はおすすめできない」という立場です。
でもSIerやSESと比較して、ライフワークバランスがとりやすい社内SE求人を探すことでフルリモートではなくてもプライベートを充実させる方法はあります。あなたが満足できる転職を実現するために以下の記事が役に立てば幸いです。
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