新卒に社内SEをおすすめしない理由を情シス&SIer歴20年の視点で解説

新卒就活中です。SIerか、金融系のデジタル部門かで迷っています
就職活動中(あるいは第二新卒の転職活動中)の方からこのようなご相談をたくさんいただきます。
情報システム部門で働く社内SEに興味を持ってもらえることは非常にありがたいことです。
ただ、わたしからは「新卒なら、SIerかITコンサルを選択する方がいい」とお伝えするケースがほとんどです。その理由は以下のとおりです。
新卒なら社内SEよりSIerをおすすめする理由
20代の成長環境が整備されている場合が多いため
評価・待遇が良い場合が多いため
けっして、情シスの社内SEを否定するつもりはありません。むしろ、将来、ぜひ社内SEになってほしいし、それこそが日本企業の競争力向上につながるとわたしは考えています。
将来のために、ファーストキャリアはSIer・ITコンサルの方が良いと考える根拠と描くべきキャリアビジョンについて、この記事で説明します。
- 情報システム部門のマネージャ職
- 社内SE採用担当歴8年(書類選考、面接)
- 大手SIer 10年以上の勤務経験
- 35歳をすぎて倍率200倍の社内SEへ
- 転職相談はX(Twitter)のDMでお気軽に!
なぜ、おすすめしないか?
① 20代の成長環境の差
社内SEとSIerでは成長環境に差があります。具体的には「会社が自社のSEに投資する意欲があるか」「マネジメント経験が早く積めるか」という点です。
SIerは自社のSEに積極投資している
実は東洋経済ONLINEが『従業員1人あたり年間教育研修費用ランキング』で1714社のうちトップ100社を公開しています。
なんとトップ50社のうち、10社がSIerなんです。いかにSIerが人材に投資しているかがわかります。SIerのトップ10が気になる方はつぎの記事をごらんください。
一方、事業会社の社内SEはいわゆるコスト部門のため、残念ながら育成予算が少なくなりがちです。新卒で社内SEになると、雑用係になってしまい体系的にアプリケーションやインフラ、ネットワークを学ぶ機会を与えてもらえない会社もあります。


SIerは社内SEより早くマネジメント経験が積める
新卒でSIerに入社すると、早い人だと5年後にはプロジェクトマネージャとして予算・納期・品質・要員確保・育成等のマネジメント業務を行います。自然と組織マネジメント職になるのも早くなります。
このSIerのスピード感と比べると、多くの業界は管理職になる年齢が高めです。
以下のグラフはセレクションアンドバリエーションが『管理職比率に紐づく管理職の実態調査』で公開している産業別の課長平均年齢です。これを見ると、スピード感を持った成長環境がSIerにあることがわかります。


② 評価と待遇
社内SEは間接部門のため、社内で高い評価がつきにくく、社内では営業やマーケティング、製品開発などの利益を生む部門が高く評価されやすいという会社が一定数あります。
一方、SIerに入ってプロジェクトで活躍すれば、利益を生む部門として高く評価されやすいでしょう。
人事評価は給与に反映され、転職時の年収交渉で優位になるだけでなく、社内で評価されるからこそチャレンジングなプロジェクトや責任あるポジションにアサインされやすくなり、あなたのキャリア構築に優位にはたらきます。
新卒でSIerを選ぶメリット
将来、社内SEになろうと考えていても、新卒ならSIerがいいんですか?



はい。遠回りのように見えますが、わたしはその方が社内SEになってからのキャリアが構築しやすいと考えています
① 開発スキル
事業会社の社内SEの役割は会社によってまちまちです。コーディングやサーバの立ち上げから設定作業まで行うタイプ、外部委託先をコントロールするだけのタイプなどがあります。
自社で開発するにしても、ベンダーをコントロールするにしても、社内SEにはシステム開発のスキルが必要になります。そして情報システム部門ではそれを教育してもらえる機会が相対的に少ないと考えられます。
② プロジェクトマネジメント経験
つぎに、プロジェクトマネジメントの経験です。これも活躍するい社内SEには不可欠なスキル/経験だと言えます。5〜10年に一度基幹システム更改の大規模プロジェクトが発足し、そこには必ずと言っていいほど情報システム部門の社内SEが携わるためです。
SIerの場合、20代後半には小さなプロジェクトのマネジメントを任されるケースがあります。遅くとも30代前半には経験するでしょう。
一方、社内SEの場合、新卒で入社したタイミングで欠員が出たシステムを担当するケースが多く、運の要素が強いと言えます。
③ 組織マネジメント経験
最後に、組織マネジメント経験です。これも社内SEとして中途採用されることを想定すると、積んでおきたい経験であり、新卒で社内SEになると経験するまでに時間を要するものです。
先述の『管理職比率に紐づく管理職の実態調査』のとおり、産業別の課長平均年齢の統計が出ています。SIerが属する情報通信業はトップレベルに管理職経験年齢が若いと言えます。
長年、社内SEの中途採用を経験している立場から言うと、管理職(あるいはその補佐)を経験したことがない30代の採用はリスクがあります。採用後に「マネジメントより技術だけやっていたい」と言い出す可能性があるためです。
あなたに対してこのリスクを感じた途端、面接官の評価はきびしいものになります。それよりも、現職で管理職(あるいはその補佐)を経験済みで、成果はなくとも失敗をどのように内省しているかを伝えられれば、未知数の候補者より選考を優位に進められます。
社内SEにはいつなるのが正解か?
じゃあ、社内SEになりたい場合、何歳が適齢期なんですか?



もちろん会社によりますが、33〜37歳あたりが適切だと思います
社内SEに求められるスキル/経験の習得には10年程度かかります。23歳で新卒入社したとして、32歳でちょうど10年が経過するころです。
SIerやITコンサルでIT基礎を学び、どこかの領域で専門性を高め、組織管理職の経験をかじったくらいが転職市場でもっとも高く評価されると考えています。
SIerから社内SEへの転職の適齢期については、以下の記事でその理由を詳細に解説していますので、気になる方はぜひ参考にしてください。


まとめ
新卒の就職活動で「社内SEか、SIerか」と迷っている方には酷な話ですが、ITエンジニアとして長い将来を考えたときに、SIerをファーストキャリアに選ぶべき理由を説明しました。
新卒なら社内SEよりSIerをおすすめする理由
20代の成長環境が整備されている場合が多いため
評価・待遇が良い場合が多いため
SIerやITコンサルという「20代で成長しやすい環境」選びは今後のITエンジニアとしてのキャリアで非常に重要な選択です。
特にコンピュータサイエンスを専攻していない大学卒や第二新卒の方なら、いかに自分に投資してくれる会社であるかと見極める必要があります。以下の記事に研修や教育に力を入れているSIerをリストアップしているので、ぜひ参考にしてください。













